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あたしがヒロを好きになったのは、入学式。
それは本当に些細なことで。
教室の窓から外を眺めていたら、彼が、大きなあくびをした瞬間だった。
部活勧誘のために、先輩方がスタンバってる群れから一人離れ、
気だるげに、彼は空を見上げた。
つられてあたしも空を見上げると、
雲一つない、快晴で。
あたしの心は、揺さぶられた。
ヒロと一緒にいたいと思った。
無我夢中だった。
全てが彼に向かっていた。
ただひたすらに、真っ直ぐに彼を想った。
どうしても、好きだった。
だから、告白をして、付き合うことになった時、
あたしは、嬉しくて泣いてしまった。
幸せが胸いっぱいな広がって、抱えきれない。
涙になって、溢れてきちゃうよ。
「泣かないでよ」
言葉にもならずにただ泣くあたしに、
ヒロは、驚いて、オロオロして、
迷った挙げ句、あたしの頭をポンポン、と撫でてくれた。
大好きで、届きたいと願った人が、
あたしの頭を撫でている。
・・・駄目だ、胸が熱いよ。
先輩に触れられた部分が、
熱いよ・・・。
こんなさりげない優しさを持つ人に出会えて、あたしは幸せだ。
こんなに好きな人と付き合えて、あたしは本当に、幸せだ。
付き合っていくにつれ、ヒロのいろんなところが、
どんどん見えてきた。
結構甘党なとこ。
つむじが二つあるとこ。
好きな色は青。
口癖は、眠い。
その、ありとあらゆるところが、あたしは大好き。
知らなかった彼の一面を見る度に、
きゅって、胸が締め付けられて、
甘い甘い気持ちがあたしを支配する。
こんなに彼を好きで、
どうしよう?
土日でヒロに会えないと寂しい。
今、何してるのかなって思うと切ない。
付き合うまでは会えなくて当然で、
授業の移動時間に見掛けるだけで一日がハッピーで、目が合ったりなんたしたら、一週間は幸福だったのに、
付き合ってる今の方が、
毎日会えているはずなのに、
もっと会いたくて仕方ない。
恋は、欲張りだ。
もっと会いたい。
もっと知りたい。
もっと、伝わり合いたい。
だから、ヒロ。
あたしと一緒じゃなきゃ、嫌だよ?
あたしだけを、見ていてね?
あたしだけを、愛してね?
あたしは、日に日に膨らんでいくこの情熱を、
抑えることができなかった。
どんどん彼にのめり込んでいって、
それはいつの間にか、
醜い、
独占欲に姿を変えていたことに、
ずっと、気付けなかった。
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