ストロベリー・ジャム。

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🍒 🍒 🍒 あたしがヒロを好きになったのは、入学式。 それは本当に些細なことで。 教室の窓から外を眺めていたら、彼が、大きなあくびをした瞬間だった。 部活勧誘のために、先輩方がスタンバってる群れから一人離れ、 気だるげに、彼は空を見上げた。 つられてあたしも空を見上げると、 雲一つない、快晴で。 あたしの心は、揺さぶられた。 ヒロと一緒にいたいと思った。 無我夢中だった。 全てが彼に向かっていた。 ただひたすらに、真っ直ぐに彼を想った。 どうしても、好きだった。 だから、告白をして、付き合うことになった時、 あたしは、嬉しくて泣いてしまった。 幸せが胸いっぱいな広がって、抱えきれない。 涙になって、溢れてきちゃうよ。 「泣かないでよ」 言葉にもならずにただ泣くあたしに、 ヒロは、驚いて、オロオロして、 迷った挙げ句、あたしの頭をポンポン、と撫でてくれた。 大好きで、届きたいと願った人が、 あたしの頭を撫でている。 ・・・駄目だ、胸が熱いよ。 先輩に触れられた部分が、 熱いよ・・・。 こんなさりげない優しさを持つ人に出会えて、あたしは幸せだ。 こんなに好きな人と付き合えて、あたしは本当に、幸せだ。 付き合っていくにつれ、ヒロのいろんなところが、 どんどん見えてきた。 結構甘党なとこ。 つむじが二つあるとこ。 好きな色は青。 口癖は、眠い。 その、ありとあらゆるところが、あたしは大好き。 知らなかった彼の一面を見る度に、 きゅって、胸が締め付けられて、 甘い甘い気持ちがあたしを支配する。 こんなに彼を好きで、 どうしよう? 土日でヒロに会えないと寂しい。 今、何してるのかなって思うと切ない。 付き合うまでは会えなくて当然で、 授業の移動時間に見掛けるだけで一日がハッピーで、目が合ったりなんたしたら、一週間は幸福だったのに、 付き合ってる今の方が、 毎日会えているはずなのに、 もっと会いたくて仕方ない。 恋は、欲張りだ。 もっと会いたい。 もっと知りたい。 もっと、伝わり合いたい。 だから、ヒロ。 あたしと一緒じゃなきゃ、嫌だよ? あたしだけを、見ていてね? あたしだけを、愛してね? あたしは、日に日に膨らんでいくこの情熱を、 抑えることができなかった。 どんどん彼にのめり込んでいって、 それはいつの間にか、 醜い、 独占欲に姿を変えていたことに、 ずっと、気付けなかった。
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