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三年生にもなると、模擬試験の回数も増え、
進路の二文字が重く、大きくのしかかる。
夏服に衣替えになってすぐ、進路希望調査があった。
「真知子、決めた?」
実花は、ぽてっとした唇を尖らせて、尋ねてきた。
「ううん、悩み中」
「だよね、意味分かんない。どうしよう、また受験だぁ」
「なんか欝になるねぇ」
嘘、だった。
あたしは、トリマーになりたいと思うようになり、
家から通える、ペット専門学校への進学を考え始めていた。
無数に用意された選択肢は、
どれも平等な頼りなさと、無限の長さを持っていて、
その中に迷う人にとっては、道を決めた人は焦りの対象でしかない。
実花は、お医者さんになりたいと目標を持つ彼氏に、
劣等感さえ持っている。
実花の気持ちを知ってるから。
あたしも実花も、
互いに目標なく過ごしてきたから。
友達として、
言えなかった。
博之は、どうするんだろう?
会えなくなるのかな?
あたしは初めて、博之と離れる可能性に気付いて、
愕然とした。
付き合っていなくても、
顔を見れたなら、
後ろ姿を見送れたなら、
それで、いい。
毎朝、彼で一日を始められるから、いい。
そう思って、胸の痛みに耐えてきたのに。
会えなくなったら、
どうしよう?
考えただけで、切ない。
幼馴染み、それは、
結局は、ただの知り合いと変わらない。
彼女と違って、
離れたら、会えない。
男らしくなった、大好きな顔を、見れない。
おはようの愛しい声を、聞けない。
そんなの、嫌だよ。
どうしよう、苦しい。
ああ、そうか。
あたしは思って、もう一度、
不安げな実花を見つめた。
口にはしないけど、
彼と離れるかもしれない不安も、
実花は抱えているんだ。
大切なものが増えていくということは、
失いたくないものが増えていくということ。
片想いと両想いは、
どっちが幸せなんだろう?
博之を想っただけで、
あたしは張り裂けそうなのに、
実花は、どれだけ切ないんだろう?
「真知子?」
あたしは思わず、実花を抱き締めた。
「ちょっとぉ、まじ頑張ろうねぇ」
いろいろ、頑張ろう。
実花に少し、劣等感のあったあたしだったけど。
今まで以上に、
実花を愛せるような気がした。
片想いだけが、辛い訳じゃない。
恋は、
いつも甘く、胸が萎むほどに酸っぱい。
あたしも、頑張ろう。
あたしの恋に、向き合おう。
実花と抱き合って、
そう、思った。
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