ストロベリー・ジャム。

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🍒 🍒 🍒 いつも読んでいる雑誌の発売日だったことを思い出して、 夕飯を食べてから歩いてコンビニに向かった。 あたしは、 博之が立ち読みをしてるのを見付けて、 一瞬、固まった。 なんで、あたしは。 コンビニの本のコーナー、ガラス越しに博之の姿がすぐに分かってしまうんだろう。 ただ、雑誌を買うだけ。 なのに、心臓がどきどきしてきた。 よりによって、キャミ姿だよ。 髪も、適当だし、眉毛もないし。 やだ、どうしよう。 そう思いながら。 博之と、話せる。 あたしは、唇を噛み締めてコンビニに入った。 私服の博之を、久しぶりに見た。 よれよれのデニムと、肩のラインが見える、黒いシャツ。 それだけで、崩れ落ちそう。 普通に、 普通に。 「おっす」 何がおっす、だよ。 自分につっこみをしながら、あたしは博之に声をかけた。 博之は、驚いたように顔をあげ、 「・・・ぉお」 と、言った。 彼の瞳に、あたしが写っている。 それだけで、窒息しそう。 「えっちなやつ読んでたんでしょ?」 「ちげぇよ、馬鹿」 ああ、何言ってるのよ、あたし。 「ってかお前、いつもと顔、違わなくない?」 かあっと、顔が赤くなるのが自分でも分かった。 さっと、眉毛を隠して、横を向く。 「変?」 あたしの口から出た言葉は、すごく気弱な調子で。 だって、好きな人にすっぴん気付かれるなんて。 恥ずかしいよ。 「・・・いや、そっちのほうがいいんじゃない?」 博之は、 穏やかに、そう言った。 コンビニのガラスに写る、博之を見る。 何事もなかったかのように、雑誌を読んでる。 ただ、それだけなのに。 空気が、優しくなった。 ヤバい、泣きそう。 今、時が止まって世界に二人だけになれたなら、 好きって、言うのに。 絶対、言うのに。 「お前、顔気にするより、そのサンダルおかしいよ。絶対、おばちゃんのだろ」 言われてあたしは初めて、足元を見て、 お母さんのピンクのゴムサンダルを履いてきたことを思い出して、 笑った。 ガラス越し、博之が、 泣きそうだったあたしが笑ったことにほっとした表情を見せた。 気を、遣ってくれたんだね。あんたは昔から、そういう奴だよね。 幼馴染みだから、 分かるよ。 ありがとう。 大好き。 ガラスを通して、あたしたちは視線でお互い会話する。 通じあうものが、 そこには確かにある。 なのに。 「ヒロ、お待たせ」
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