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ハスキーボイスのあたしには真似できない、可愛らしい声がした。
あたしは、一瞬にして、
冷水を浴びせられたように、固まった。
「待った?」
「いや、平気」
「行こ」
「うん」
なんて、醜態。
コンビニを出ていく二人。
止めて、手を繋いだりしないで。
胸が、痛い。
女の子は、可愛いワンピースとミュール。
細い手足。
ガラス越しにあたしは二人を目で追い掛ける。
見たくないのに、
視線を反らせない。
その時、女の子がちらっと、
あたしを振り返って値踏みするような目線を投げ掛けた。
いや、あたしの思い込みかもしれないけど。
あたしの博之だから。
そう、言ってるように見えた。
悔しかった。
すっぴんでお母さんのサンダルのあたしは、
確実にあの子に負けた。
いや、勝ち負けをあたしが意識するというよりは、
あの子が勝ちを意識させる程度の自分だったことが、
悔しかった。
あたしは改めて自分が一人であることを思い知り、
全力疾走して家に帰った。
溢れてくる感情を、
どうしていいか分からない。
博之の優しさに触れた分だけ、
浮かれた分だけ、
惨めだった。
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