ストロベリー・ジャム。

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🍒 🍒 🍒 「ねぇ、あの人、誰?」 「うん?幼馴染み」 「ふぅん」 あたしは、ヒロの大きな掌を、 ぎゅっと、強く、 握り締めた。 ヒロをコンビニのガラス越しに、あたしはすぐに気付いたのに、 ヒロは、あたしに気付かなかった。 ガラスに写るあの子を見て、 優しく微笑んでいた。 ヒロが、 あたしにしか見せない顔を、 あの人にした。 あたしはすごく、悲しかった。 ダメ、やめてよ。 あたしだけのヒロでいて。 あたしがちらっと後ろを振り向くと、 雑誌コーナーのあの人は、 こちらをじっと、 穴が開くくらい見ていた。 女の勘が、告げる。 あの人、 ヒロが好きだ。 あたしの、ヒロなんだから。 お願い、獲らないで。 「なんて名前の人?同い年?学校は?」 「真知子ってゆって、同じ年だよ。二高かな。なんで?」 「ん、ヒロの幼馴染みって聞いたから、聞いてみた」 「家が向かいでさ、腐れ縁ってやつなのかなぁ」 「遊んだりとか、しないの?」 「しないし」 ヒロは、笑った。 「でも、そんなに仲いいなら、メールとか電話とか」 「・・・しないよ」 ヒロが優しい眼差しで、あたしを見て、 掌をぎゅっと、強くきつく、握ってくれた。 気付かれた。 あたしはすごく、情けない気持ちになる。 幼馴染みくらい、気にしない、ヒロに似合う女の子になりたいのに。 ヒロはあたしを子ども扱いで。 背伸びをしても全然、届かなくて。 ヒロが好きだから、悔しいよ。 小さな嫉妬に気付かれたことが、恥ずかしいよ。 自分をしっかり持って、 ヒロに愛されるあたしでいたいのに。 そんな優しい眼差しで見られるのが、 今はすごく、 苦しいよ。 「ヒロ、キスして」 「えっ、急にどしたの?」 「ヒロとキスしたくなった」 ヒロは、甘えんぼだなぁ、と頭を撫でてくれた。 ねえ、真知子さんには、 そんな風にしないよね? ヒロの全てが、あたしに対する愛に溢れてるって信じてるのに。 駄目。 醜いあたしは、 あの人と比較してしまう。 子どもじゃ、ないよ、あたし。 公園のベンチに行き、 ヒロはあたしにキスをしてくれた。 唇を離そうとしたヒロの顔を両手で抑えて、 あたしは更に、長いキスをした。 ヒロ、あたしだけを見ていて。 あたしを、一番に愛して。 不安が胸の中に広がってきて、 それを消したくて、あたしはヒロとキスをした。 触れ合って、繋がっているはずなのに。 すごく、切ないキスだった。
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