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入院生活も楽しくなった頃には、骨折もすごい回復力で治っていった。
『来週は退院できますよ!』
その頃は以前と違い…
【完全に治れば、仕事に復帰して1日中チャットなんて出来ないなぁ…】
とか不純な思いが私を憂鬱にさせた。
私は美容師で多少足が不自由でも、手はすこぶる元気で関係ないし…
そして…いよいよ退院…
その2日後のチャットで【心の穴】は女性で「ナホ」って名前…で31才
千葉県で美容師をしてるという事を知った。
私も名前は「ゆう」25才
横浜で美容師をしてると教えた。
ただでさえ魅力的に感じた彼女が同業者だなんて…
私のテンションは人生で最高に上がり…めちゃくちゃはしゃいだ。
あの少し前の無気力な私は遠い昔に思えたほど…
ナホのおかげで生きる意味がある気がしたんだ。
それをきっかけにお互い少しづつ…
相手を知り、ますます絆が深まった…って私だけ思ってた。
今思えば…
無防備な私に対しナホは探り探りだったように思う。
いつしか…
チャットは卒業してメールや電話で話すようになっていた。
あの日、静かに…
優しい声でナホは話し始めたんだ…
「ねぇ…ゆうは女性を好きになった事ある?」
「実は私…ビアンで彼女も…いるんだ」
「でも!ゆうが好きで気持ちをもう隠せないんだ…」
少し泣いてるみたいだった…
心臓は喉まで上がり…
今にも口から飛び出そうで…
「そ…そうなんだ…」
これが精一杯の返事だった。
あまりの私の動揺に少し悲しそうに…
「驚かせてごめん…また明日電話するから…」
「うん」
ってちが~う!
このまま電話切ったらナホが傷つくじゃん!
でも気持ちとは連動せず…
電話を切っていた。
そう、それから3日間ナホから連絡はなかったんだ。
私は時折…
携帯を眺めては後悔で押しつぶされそうになっていた。
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