動揺

2/2
前へ
/27ページ
次へ
入院生活も楽しくなった頃には、骨折もすごい回復力で治っていった。 『来週は退院できますよ!』 その頃は以前と違い… 【完全に治れば、仕事に復帰して1日中チャットなんて出来ないなぁ…】 とか不純な思いが私を憂鬱にさせた。 私は美容師で多少足が不自由でも、手はすこぶる元気で関係ないし… そして…いよいよ退院… その2日後のチャットで【心の穴】は女性で「ナホ」って名前…で31才 千葉県で美容師をしてるという事を知った。 私も名前は「ゆう」25才 横浜で美容師をしてると教えた。 ただでさえ魅力的に感じた彼女が同業者だなんて… 私のテンションは人生で最高に上がり…めちゃくちゃはしゃいだ。 あの少し前の無気力な私は遠い昔に思えたほど… ナホのおかげで生きる意味がある気がしたんだ。 それをきっかけにお互い少しづつ… 相手を知り、ますます絆が深まった…って私だけ思ってた。 今思えば… 無防備な私に対しナホは探り探りだったように思う。 いつしか… チャットは卒業してメールや電話で話すようになっていた。 あの日、静かに… 優しい声でナホは話し始めたんだ… 「ねぇ…ゆうは女性を好きになった事ある?」 「実は私…ビアンで彼女も…いるんだ」 「でも!ゆうが好きで気持ちをもう隠せないんだ…」 少し泣いてるみたいだった… 心臓は喉まで上がり… 今にも口から飛び出そうで… 「そ…そうなんだ…」 これが精一杯の返事だった。 あまりの私の動揺に少し悲しそうに… 「驚かせてごめん…また明日電話するから…」 「うん」 ってちが~う! このまま電話切ったらナホが傷つくじゃん! でも気持ちとは連動せず… 電話を切っていた。 そう、それから3日間ナホから連絡はなかったんだ。 私は時折… 携帯を眺めては後悔で押しつぶされそうになっていた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加