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もうお馴染みになってしまった光景が、そこに繰り広げられていた。
流れる人の群れ、止まない雑踏。
その中で、一人取り残されたように、時計台にもたれかかる俺。
「はぁ......」
軽く溜め息をついて、空を見上げた。
太陽はゆっくりと流れる雲に隠れ、それでもしっかりとした光を放っていた。
ちょっと曇った、でも晴れと定義できるであろう天気。
夏場はこれくらいが丁度いい。蒸し暑いのには変わりないけどな。
......さて。
(ちなみ......遅いな......)
この際、『来ない』という可能性は鍵箱に仕舞っておく事にしよう。
「.........」
そのまま首を逸らせ、視線を時計に移す。
真下からなので読みにくいが、辛うじて時刻を知る事は出来た。
2時。
(一時間の遅刻...)
何度も言うが、『来ない』という可能性は、厳重に思考から排斥することにしている。
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