二度目の正直。

2/7
前へ
/85ページ
次へ
もうお馴染みになってしまった光景が、そこに繰り広げられていた。 流れる人の群れ、止まない雑踏。 その中で、一人取り残されたように、時計台にもたれかかる俺。 「はぁ......」 軽く溜め息をついて、空を見上げた。 太陽はゆっくりと流れる雲に隠れ、それでもしっかりとした光を放っていた。 ちょっと曇った、でも晴れと定義できるであろう天気。 夏場はこれくらいが丁度いい。蒸し暑いのには変わりないけどな。 ......さて。 (ちなみ......遅いな......) この際、『来ない』という可能性は鍵箱に仕舞っておく事にしよう。 「.........」 そのまま首を逸らせ、視線を時計に移す。 真下からなので読みにくいが、辛うじて時刻を知る事は出来た。 2時。 (一時間の遅刻...) 何度も言うが、『来ない』という可能性は、厳重に思考から排斥することにしている。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加