二度目の正直。

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「......お?」 思いが通じたのか、人ごみの中に例の面倒くさそうな表情を見つけた。 「ちなみ!」 びくっ、と固まるちなみ。 俺はそのまま歩み寄り、頭にぽんと手を置いた。 「なんだ、結局来てんじゃねーか......」 「......違う。見物に来ただけ。君、まだ待ってるのかなーって」 「その割には気合入った服装だと思うけど」 「うるさい......これが私のスタンダードなの」 相変わらず視線は合わせずに、飽くまで面倒くさそうに言う。 「じゃ、行こうか、ちなみ」 「ちょっ...私は、見物に来ただけ......離して」 「どうせ暇なんだろ? 付き合えよ」 腕を強引に引っ張る。 「君とは違うの......」 「まあまあ」 「離しなさいっ......絶対、君とデートなんて願い下げ」 「まあまあ」 「さっきから...それしか言ってない...ちゃんと返事して」 「まあまあ」 「で」 「ん?」 「......なんで、ここな訳?」 「なんでって...デートといったら映画だろうが」 「短絡的......」 そう言いつつも、俺が抱えたポップコーンをつまむちなみ。 「仕方ない、付き合ってあげる...で......何見るの?」 「おお、よくぞ聞いてくれた」 「......オーバーに動かない。ポップコーン、こぼれる」 「おお、すまん」 荷物のバランスを修正してから、俺は出来るだけ感情を込めて言った。 「なんと、今日見るのは...じゃーん、このホラー映画なのだ」 そう言って看板を顎でしゃくる。
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