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「.........バカ」
やっと追いついた少女の第一声は、そんな罵倒の言葉だった。
「バカって......なんで逃げるんだよ?」
「貴方と帰ったなんて......絶対、周りに知られたくない」
「おい...ひどいな......」
視線は合わせずに、お互い前を向いたまま喋る。
昔から幼馴染として付き合ってきて、編み出された完璧な『間』。
どうも彼女は面と向かって話すのが苦手なようで、こちらが目を見て話そうとすると機嫌が悪くなるのだ。
猫みたいな奴だな...
「......で、覚えてるよね?約束」
「ああ、これからホテルであんな事やこんな事を----」
「最低。だから嫌なの」
「冗談だって......パフェだろ?」
「うん......そうだけど、やっぱいらない」
「え?」
思わず、彼女の顔を見やってしまった。
相変わらずの面倒くさそうな表情。
「そうか、やっぱり俺と帰るための口実----」
「......違う。貴方と長い時間一緒に居てまで...パフェ食べたくないってこと。お腹、空いてないし」
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