生存者

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非常扉の横に居た彼女は燃え上がる前に、バスから脱出できた。 しかし、正規扉は開かず他の人間はバスと共に、目の前で焼けていった。 一緒に旅行へ出掛けた友人が衝突の衝撃で座席に脚を挟まれた時、彼女は躊躇いなく友人を見捨てて逃げている。 そして彼女は『奇跡の生還者』になったのだ。 この事故による死者38名。 彼女はマイクに向かい、グロスで光る唇から言葉を発する。 「友人や同乗していた方の分も、これから精一杯生きていきたいと思います」 目頭に指を添え涙ぐむ。 嘘泣きでマスカラが流れしまうのを嫌った行動。 「亡くなった方もそれを望んでくれていると思います」 涙ぐんだ事でフラッシュの量は増えた。 生中継のカメラが彼女に近付きアップで報道する。 放映中のテレビ局には視聴者からの電話が鳴り続けた。 変な声が入っていると。
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