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生存者
スポットライトに当たりフラッシュがたかれる中、一人の女性が報道陣を見回していた。
白いクロスの掛かった長テーブル列べられたマイク。
彼女の横には地味なスーツを着た男性達が、俯いて座っている。
「今回の事故の責任はどうするんですか?」
「過失はバス会社も零じゃないですよ」
矢継ぎ早に質問が繰り出され、報道陣は興奮した様に詰問口調でまくし立てていく。
「奇跡の生還を果たした訳ですがお気持ちは?」
「バスから脱出した感想を一言」
旅行先で起きた観光バス炎上事故、唯一の生存者である彼女。
しおらしい顔をしてライトが自分に向くのを待っていた。
「事故当初どれだけの生存者が居ましたか?」
「スリップの原因は整備不良との事ですが、どう感じました?」
質問にわざと沈痛な表情を作る、注目されている事を喜んでいると悟られてはならない。
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