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双子のドールは、これもまた開けっ放しになっている夢の扉を通って"nのフィールド"へと飛び込んでいった。
「真紅!」
その先で2人が見たものは、肩を押さえながら上方を睨みつけるジュン、黒い羽根で壁に縫い付けられた真紅、そして倒れている雛苺だった。
そしてその3人を中空から見下す、真夜中の闇を切り取ったかのような黒いドレスと黒い翼を纏った、禍々しくも妖艶なドール。
「水銀燈! また君か!」
身の丈ほどもある鋏を手にした蒼星石が吼える。
「ふぅん……また友達ごっこぉ? くだらなぁい……興が殺(そ)がれちゃったわぁ……また会いましょ、真紅。今度はあなた一人で来なさぁい」
「ク……待ちなさい水銀燈!」
水銀燈と呼ばれたドールは羽根を舞わせながらどこかへ飛び去った。
「アイツは……行ったみたい……だな」
安堵の溜め息をつきながらジュンが言う。
「キィーッ! あの野郎には一発お見舞いしてやらんと気が済まねーです!」
翠星石が両拳を振り上げて言う。
「みんな、大丈夫?」
真紅を壁に縫い付ける羽根を引き抜きながら蒼星石が尋ねる。
「遅かったじゃない。まったく、使えない家来ね」
その名の表すとおり深く鮮やかな真紅のドレスに付いた砂を払いながら、落ち着き払った声で答える。
「……なんでお前は助けてもらっておいてそんなに偉そうなんだよ」
もはや高慢な物言いの真紅にジュンがツッコミを入れるという方程式ができあがっている。
「うるさいわね。さ、帰りましょ。早く来ないとおいていくわよ」
ジュンのツッコミをいつものように蹴散らし、足早に"穴"へと歩き出す。
「……真紅……」
蒼星石が苦笑いを浮かべながらつぶやく。
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