疑惑

5/5
前へ
/82ページ
次へ
何て声を掛けていいのか分からず、2人は暗く俯いたままだった。 私には何も言えない。 言えるはずがない。 自分も同じ体験をしているから…。 “何かの間違いだよ!”何て軽く言えない。 彼女の気持ちを一番分かるのは私だから…。 そんな状況を打開してくれたのは彼方だった。 『何2人で暗くなってんの!?お通夜してんなよ~(笑)』 こっちの状況も知らずおちゃけて話し掛けてきた。 『あのね~!!』 と、美沙のもう一人の“私”について話した。 『気にすんなって!そっくりさんが流行ってるんじゃねぇ?(笑)』 笑えないよ彼方。 自分は何もないからそんな事言えるんだよ。 少しムッとした私と美沙。それを感じたのか彼方は 『そんなに気になるなら、放課後3人でそのそっくりさん探すか?本人が逢って確かめた方がスッキリするだろ?』 一理ある。 私と美沙はもう一人の“私”の話は聞くが、実際には逢っていない。 だからこそ、不安が募るのだ。 逢って話が出来れば少しは不安がなくなるかも… 美沙も同じ考えだったのか、目が合うと頷いた。 『じゃあ放課後探しに行こ!』 『了解!じゃあもう今は暗くなるなよ!分かった??』 『『は~い(笑)』』 先生みたいな口調の彼方に少し笑みがこぼれた美沙と私。 目が合うとまたクスッと笑った。 こんな時頼りになるのはやっぱ彼方だよねー。 いつも私達を引っ張ってくれる。 頼りになるお兄ちゃんだよ(笑) 放課後までは何も考えずにいよう。 少しでも不安を軽くしたい…。 今はこの楽しい一時を味わおう。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加