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『大丈夫か?何があったんだ?』
彼方の問い掛けにすぐには応えられなかった。
『…アイツが来てたのか?』
黙る私に司ず彼方は聞いた。
その言葉にコクンと頭を揺らす事しか出来なかった。
実の親でさえ見分けがつかない“私”…
そんな奴がもう目の前まで迫ってきている…
動悸が激しくなり、気分が悪くなってきた。
まだ見ぬ“私”にとてつもない威圧感を覚える。
『…さっき遊びに行くって家出たとこなんだって。それなのにすぐ帰ってきたから、お母さん驚いてた。…私じゃないのにね。親なのに私を見分けられないなんて有り得ないよね』
苦笑しながら重い口を開いた。
2人からの返事はなかった。顔を見合わせ、困っている様子が感じとれた。
『もう…家にまで来てるんだね。このまま私は消えちゃうのかなぁ?』
口にしたくなかった言葉が自然とこぼれた。
不安が募り過ぎて思わず出てしまったのかも。
自分でもよく分からない。
『そんな事ない!!』
目を大きく見開いて声のする方を振り向いた。
意外にも美沙だった。
美沙が大声出すなんて思いもよらず、驚いてしまった。
彼方も同様。
口を半開きにし、ポカーンとした様子。
『み、美沙?』
恐る恐る聞き返す私。
『消えるとか言わないで!そうならない為にこうやって探してるんでしょ!?だから悲しい事言わないで。ね?頑張ろう!』
美沙も不安なのだろう。強く言葉を発しているが、表情は今にも泣きそうになっている。
改めて皆不安なのは一緒なのだと痛感した。
『う、うん。ごめんね…頑張ろう!』
そう…こんな所で挫けている暇はない。
早くアイツらを探さなければ…
手遅れになる前に…
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