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クレープを食べながらいつもの様に他愛のない話をして、帰った。
家の前に着き、入ろうとしたら、
『江美!今日は変な事言ってごめんな。きっと俺の勘違いだよ!だから気にすんなよ!』
彼方は公園での沈黙を気にしていたのだろう。
私に気遣ってくれてこんな事を言ってくれたに違いない。
優しい彼方。
少し困らせてやろうと私は
『今日は眠れないかも…』
と、ワザと目を下に向け暗い声で言った。
『えっ!?いや…ほら、ただの俺の見間違いだって!』
『でも、私に似てたんでしょ??』
焦る彼方。
今にも笑い出してしまいそうになる私。
『似てない!似てない!あれは…そう!木だ!木の木目を人間の顔と見間違えたんだ!』
『何それ!じゃあ私の顔は木に似てるって事!?』
『いや、そうじゃなくて…』
テンパって口ごもる彼方。
『あははははっ!』
思わず我慢出来ずに笑い出してしまった。
その様子をキョトンとした目で見てくる。
『ごめんごめん!気にするわけないじゃん♪クレープ食べてすっかり忘れてたよ(笑)』
『てめぇ…こっちは本気で心配したじゃねぇか!』
笑って私の頭をクシャクシャにした。
『まぁ気にしてないなら良かった。じゃあまた明日な』
手を振り帰っていった。
ほんと、彼方に言われるまですっかり忘れてたよ。余計な事思い出させてくれなくていいのに(笑)
そんな事を思いながら家へ入った。
これがヤツを見かけた初めての日。
この日を境に、ヤツは頻繁に姿を表す事になろうとはこの時は思いもよらなかった。
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