リバイブ

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眠れない夜と、まずい病院食を乗り切り、検査の毎日から開放され、翌週に退院が決まった。 抜糸はまだ二三週間先だが、普通に生活するのには支障がないらしい。 自分の足で院内をうろうろ出来るようになっても、なかなか自分の身体を見に行く決心がつかなかった。 だがもう日がない、話しをつけてやる。 そう決め、蛇男の来ない日を狙い、北川晴子の病室に向かった。 カーテンレールの閉じた窓際、午後の光が黄ばんだ布を白く染めている。 カーテンに手を掛ける。 生まれて初めて、自分の目以外で自分を見た。 健やかに眠っている自分の寝顔が奇妙で、現実味に欠ける。 自分の顔だが、自分とは違って見える。 臭いも雰囲気も。これは違う私じゃない。 デコを数回叩く。 「起きて」 さいわい、周りは食堂や散歩で留守が多く、普通の声で話しても差し障りない状況だ。 「起きろって」 強めの打擲<ちょうちゃく>に、ぴしゃりといい音がした。零<ゼロ>から十の勢いで、目を見開き私の顔がこちらを見た。 「ああ」 「こんにちは」 私の顔が強張っていくのを見る。 「君さ、何のうのうと他人<ひと>の身体乗っ取ってんの」
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