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耳まで赤くして俯<うつむ>く自分に吐き気が込み上げてくる。
「ああ、そう」
動揺<どうよう>して裏返った声がさらに動揺を誘う。
「すればいいじゃん結婚、英国<イギリス>にでも行けば?」
「兄弟は無理、だ、よ」
「それが理由?」
「へっ?」
「それが、線路に飛び込んで、あまつさえ私の身体を返そうとしない理由なの?」
「だって」
「だってじゃねえ、テメー、ふざけんなよ!!」
ベッドに乗っかかり、俯<うつむ>いて人の目を見ようとしない自分の髪を掴んで、目を合わせた。
「どんだけ自分勝手なんだよ、他人を、私を巻き込むんじゃない!!」
「ひっ、でっ、でも、戻れない、もう、戻れないから!!」
「わかんねえだろが!!」
平手を食らわせようと、手を振り上げると同時に、身体が宙に浮いた。
首に掛かった腕が、この身体をベッドから引き下ろし、そのまま腰を抱えどんどんとベッドから遠ざかる。
首を巡らし見上げると、懐かしい弟の顔があった。
「和美<かずみ>!」
「小僧、橘の弟か」
「違うよ、私だって和美、お姉ちゃんだって、分かるよねえ?」
弟に廊下に出され、今まで一度も見せたことのない表情で、見つめられた。
呆れたような、哀れむような、冷たい視線。
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