リバイブ

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茹だるよーな暑さだった。 いつ倒れてもおかしくないくらい暑くて、視界の隅で何かが傾斜していくのも、自分が倒れていくのかと勘違いしたくらい朦朧〈もうろう〉としていた。 日よけがあっても、人混みにいるより、炎天下のプラットフォームに一人でいる方がいい。 たった5分の電車待ちが、砂漠の一時間に思えた頃、それが倒れていくのが見えた。 子供だった。 それだけ確認して、後は飛び出していた。 落ちる!! ファンという警笛の音が、この駅のホームに電車が来た事を知らせていた。 ここは進行方向1番前だし、何とかなると、子供の服の背中を掴んだまま、自分ごと線路に落ちた。落ちるなり、ホーム下の隙間に避けようと子供の腕を掴むと、思いもかけず、光のない黒い穴のような目と合った。 熱中症か貧血で倒れたんだという咄嗟の判断が、間違っていた事に気付いた。 自殺だったのか。 衝撃と背を打つ痛みとが同時に起こり、背中が割れたと思った。 背骨が自分の皮を突き破って、飛び出たんじゃないかという絶望が、砂漠での最後の記憶だった。 うわ、今何時?もしかして寝過ごした? もういい、もう今日は会社休む。 焦って目覚まし時計を探し傾けた首が固まった。誰?見知らぬ若い男がこちらを見ている。 幽霊かもしくはまだ夢の続きか。男の手が、肩の辺りに触れた。 よく見ると、泣き腫〈は〉らしたような赤い目が痛ましかった。 中学から大学まで女子校生活10年、彼氏いない歴24年の私にこんな男の知り合いはいない。 イケメンだがどこと無く嫌悪感がはしる。 (あなた、誰ですか?) 声が出なかった。 男の後ろから覗いてきた看護士の姿を見て、ああ、そうかと駅であった事を思い出した。 死んだとばかり思っていたが、どうやら助かったらしい。 ちょっと身体を起こそうとしたら、二人に思いっきり制止された。「まだ動いちゃ駄目だ!」 「痛ッツ、背中ガ」 何だか変な感じだ。 自分の耳孔に届く声が、高くて低い。 (あれ?)
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