ラブフィニティ

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「同じ電灯がずらりと並んでるよ、それちっとも目印になんないから」 「じゃあ私、輝くから! 誰より輝いてみせるから! 私を見つけて」 「はあ、それじゃあ、分からなくなったら携帯にかけるから。 北川目がいいんだから、そっちで私を見つけて誘導してよ、んで、味は何でもいい?」 「うん任せる。 早く帰ってきてね、私、寂しいと死んじゃうから」 「アハハハ、そんじゃいってくるよ、あっ」 「何?」 「風船、空に」 「ああ、本当だ怖い」 「怖い?」 「うん、だって……」 だって、怖いよ。 さっきまで誰かの手にあったものが、誰の手も届かないあんな空高くにあるなんて、怖い。 ちょっと手を放しただけなのに。もしかしたら、ちょっとくらいなら平気かと思って試しに手放したかもしれない。 でも、糸は、すぐに手が届かないところへ上がる。 見ている間に、鳥も飛ばない上空まで昇って、点になって、やがて見失う。 たった今まで触れることができたのもが、一瞬で永遠に手が届かなくなるのって、なんか寂しいし、怖いよ。 だってそれは、死に似てる。 学校から戻り、ベットに横たわってやることもなくうつらうつらとしながら、昔のことを思い出していたが、暗くなるにつれ、意識は深く閉じていった。 激しく波立つ海面ギリギリで、溺〈おぼ〉れているような窮屈〈きゅうくつ〉な眠りから覚まされ、キョウはまだ覚醒しきれていない頭で、飼い猫のツブを探すように光源に目を向けた。 「寝るなら、夕飯食べてからにしろ」 廊下から差し込む光に目を細め、キョウは唸〈うな〉るように「いらね」と体を反転させた。 パチンと部屋の明かりが点き、キョウは光から逃れるように布団の中に頭を引っ込めた。 「おきろ」 乱暴に取り払われた布団に、キョウは瞬時に腹を立てて、起き上がるなり都の腹を蹴り下そうと足を出した。 だが、出した足は都に掴まれ、引き擦られてキョウはベッドから床に落ちた。 跳ね起きて殴り掛かってくるキョウの腕を、都は掴む。 力が均衡し、ジリジリと鬩〈せめ〉ぎあうなか、都はその顔を見てキョウの機嫌の悪さを知った。 キョウはどうやら、一発当てないと気が済まないらしい。 引く気配も見せず、こちらの隙を窺〈うかが〉ってくる。 やり方は完全に喧嘩慣れした者の間合いで、「京」の時には殴りあったことなど皆無な都にとってキョウの気迫が恐ろしく思えた。 「ツブしてやる」
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