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横に走る稲妻を見た。
その次の瞬間、その兆〈きざ〉しの電光とは異なり、大きな光の波が、瞬く間もなく瞳孔を焼いて世界を包んだ。
この時代に生きる誰しもがもつ終焉〈しゅうえん〉のイメージそのままの映像を最後に、暗転した。
熱気と回転に窒息〈ちっそく〉しそうになりる。
体中を打ちつける痛みと恐怖は鈍く、覚醒と共に生きていることを知る。
黒煙を吹く鉄塊からはいだし、折れた尾翼を超え、静かな方へただ自分で自分の体を運び出すように移動する。
「雪」
視力の及ぶ限りあり、それらはゆらゆらと降りてくる。
顔に降り積もる雪に温度はない。膝を折り、崩れた場所でふと視線を横に向けると、人がいた。
雪のように白く見えたのは、本当に雪で被われているからだ。
透けるように白い顔、白い口唇が動く。
「灰だ」
「マザコン野郎か」
「俺は、そんな名前じゃねえよ」「お前の名前なんてどうだっていい、どうなってんだこれは。
なんで飛行機がいきなり落ちたんだ」
「終わったんだ」
「どういう意味だ?」
「戻れないってことだよ」
灰色の世界でただ一つ色があるなら、その赤い目だけだった。
「見ただろう、あの光を」
「ああ、まるで世界の終りを告げるような閃光だった」
男が口元を上げる。
たぶん笑ったんだ。
「世界が終ろうと、どうだっていい。
俺は、あの人のそばに戻れなかった。
俺はあの人に、子であることの誇りを告げられなかった。
労わりの言葉も、温もりも、感謝も伝えられなかった。
これから助けることも、助けになることもかなわない」
「お前の言ってることがわかんねえ。
テメエが助かったんだ、それでいいじゃねえか。
そんで、次はどう生き残るかだろうが」
「頼もしいね、この光景にあって絶望しないのか?」
「分かんねえんだよ、何がどうなってんのか、分かってからじゃないと、絶望のしようもないだろうがよ」
「じゃあ分からせてあげようか、俺が味わった絶望を、お前にもさあ!!」
色をなくしていた唇が、滴る血を連想させるように赤く湿る。
覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ!!
なんだこりゃあ、昨夜観た3Xの影響か?
なあ、俺が何をしたって言うんだよ、橘!!
リズムを刻むようなノックの音で、訪問者が誰だか予想が付く。
「遊ぶな」
「陽一郎か」
「ああ」
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