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「えっ? 滝田? 滝田って、あのクソムカつくガキ?」
「クソムカつくガキだと?
この野郎、テメエ、髪そんなんしてっから、あんなのに目をつけられんだ!
だいたいなんで俺の顔を忘れんだよ、蓮池は覚えてて」
「お前、滝田か、懐かしい……すっかりおっさんになって。
何食ったらそんなんでかくなれんだ、お前国体に出るつもりか? それに、金髪だから狙われたわけじゃねえ。
あいつらは俺が先に山下のバス停んとこで踏みつぶしてやった仕返しに来たんだ」
「橘、お前……」
滝田は深いため息を吐き出し「本当に危なかったんだぞ」と真剣にに言った。
「なんだ? お前性格変わったよな」
「お前なあ、あんなとこ一日ほとんど人が通らねえんだぞ。
偶然誰かに見つけてもらえるなんて本当にねえよ。
それを蓮池が見つけたんだ、奇跡的にな、そのおかげで俺が助けに行けたんだ」
地下鉄の駅からショッピングモールへはペデストリアンデッキが渡してあるため、その付近の地上の道は昼間でも閑散〈かんさん〉としていた。
「そうなんだ、ありがとう蓮池さん、あの付近に住んでるの?」
「いえ、私はいつも駅からショッピングモールはあの道を通るんです」
「わざわざ?」
「はい、あそこの、あの壊れたお家の庭の木の花がいつまで咲いてるのか確かめたくて」
「花かよ」
「ああ、あった、黄色いラッパみたいな大きなのが吊下がってた」「はい、そうです。
橘さんも見たんですねあの花」
「見た。
そうか、蓮池さんはお花が好きだもんね」
「はい」
「あれ、なんていう花なんだろうね」
「あれは、木立朝鮮朝顔です。
九月ぐらいから咲いていたのが、十月に枯れて、十一月に何故かまた咲き出して、今もいくつか花が残っているんです。
別名エンゼルストランペット。
天使のトランペットっていうんですよ」
「おい、ほっこりしてるとこ悪いんだけど、言っておくが重傷だそうだからお前、ここに入院な」
「そういえば、ここどこ?
お前の家?」
「そう、病院連れてったら、学校に報告されると思って気をきかせたんだ。
ここは接骨院だけど、怪我くらい治せるって親父が言うからよ」
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