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「看護婦さん、私北川なんですけれど」
「ん?どうしたの、なに?」
何を言ってるのかわからないふうに看護士が首をかしげる。
「あの私北川なんですけれど、起きたらなんか身体が自分のと違ってたんですけれど、これって治りますか?
なんか、先進医療的なもので、治せます?
ちなみに保険とか入ってないんですけれど、ああ、でもお金が掛かっても治るなら治してほしいんですけれど」
必死さが空回りして、最後どうでもいいことを付け加えたが、目を見て話しを聞いてもらえた事に安堵したのもつかの間、真摯な態度が一変して看護士は破顔し「お兄さんでしょ」と前髪に付いたゴミを取ってくれながら言った。
「えっ?」
「橘君のお兄さんって弁護士さんなんでしょう?
弁護士さんて真面目な人ばっかりだと思っていたけれど、諧謔精神<かいぎゃくせいしん>もあるのね」
いや、違うって、あの蛇男は関係ないって!
「諧謔精神ってわかる?」
「ユーモア?」
「あら賢い、北川さんもね、北川さんはお兄さんから聞いてるよね?
橘君を助けてくれたお姉さんなんだけれどね、そのお姉さんも、おととい目を覚ました時に、自分の身体じゃないって大騒ぎだったのよ。
でも、すぐに落ちつかれて、今は橘君のお兄さんがいい相談相手みたい」
なんだそりゃ、クソッ他人の目を気にしろってんだ、あの男、私とは赤の他人やぞ!!
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