478人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだ頭は?
頭は打ってないんですか」
「北川さん?」
「そのお姉さんも私も」
「ウフッ、橘君可笑しい、まだ、私って言ってるのね」
はあ、「私」にダメ出し!?
「大丈夫よ二人とも頭は打ってないから、二人揃って背中に同じ怪我をしたけれども、ああ、その、橘君は自分の怪我を治す事だけ考えればいいんだからね」
そう言って苦笑いする、その態度を見て、自分はいま北川晴子に怪我を負わせるきっかけをつくった橘京なのだと知らされる。
大人の自分の言葉が届かなかったのだ。
ただでさえ、自分でも理解出来ない状況をこの加害者の位置にある子供の姿で言葉で、この先誰かにきちんと伝える事が叶うだろうか。
(怖い)
自分の言葉が通じず、誰からも話しを聞き入れてもらえず、この声が届かないのだとしたら。
「あらっ、もう面会時間終わっちゃうね、お母さんどうしたのかな、さっき廊下で見かけたから、探して呼んでこよっか?」
「いえ、呼ばなくていいです」
「そう、じゃあ明かりが消えるけれど、何かあったらこれを押してね」
首横に置かれたコードの先をちらりと見て、暗くなった天井を見上げた。
眠れば何か変わるだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!