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目を閉じても、わずかな瞼を刺激する光と煩瑣な思いで、安らかな眠りは一向に訪れる気配をみせない。
考えてみれば、いま自分の身体は自殺未遂の小学生に預けているのだ。
殺人願望のある人間と同じ部屋で暮らしているようなものじゃないか。
冗談じゃない、私の身体で自殺されたら、両親は私が自殺したと思うだろう。
それは怖い。そ
れだけは、絶対にいやだ。
この身体とともに私が死ぬ事よりも・・・・・・。
結局ほとんど眠れなかった。
「橘君、昨日寝てないでしょう」
看護士の声が二日酔いの翌朝のように頭に響く。
「自分の身体の事を考えたら不安で」
「だったら、なおさらしっかり寝ないとダメよ」
いや、この小僧の身体はどうでもいい、私の身体が心配。とにかく、動けるようにならないと何もできない。
まず、あの小僧と話しを付けないと。
「あっ」
「どうしたの?」
意識が戻って早速大部屋に移される事になり、傍らで作業をしている看護士が声を掛けてきた。
「なんでもないです」
言いながら、今閃<ひらめ>いた事に胸が弾んだ。
両親なら会えば私だとすぐ気付くのではないか?
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