プロローグ

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2005年 冬 7F 廊下の横、ナースステーションの向かいにある、談話室のような場所。 人気の無いその場所に設置された、いくつかのソファーやパイプ椅子、それと大きめのテレビ。その28型のブラウン管からは、どうでもいい新春特番が今日も流れていた。そんなつまらないテレビを、さも、つまらなさそうに見ている、どこかの女の子。 小柄な身体に、ピンクのパジャマ。手首には俺と同じ、白い腕輪。 腰に届くほどの長い髪が印象的だった。 『なぁ、お前…それ面白いか?』 深い意味はない。人気がないので、何となくその横顔に話し掛けた。 「別に…」 只、それだけを返す女の子。 声を掛け倒れに振り向きもしなかった。俺の事は一切気にしていないのか、ずっとつまらなそうにテレビを見続けたままだった。 …だったら、見なきゃいいのに… そう思いながらも、同じようにパイプ椅子に腰を掛ける俺。そして、並ぶようにしてテレビを眺めた。 他にすることもなかった。出来ることもなかった。 …黙ってテレビを眺め続ける俺達… ブラウン管の中からは、正月にありがちな新春番組。くだらないモノマネだか隠し芸だかがやっていた。
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