プロローグ

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時折響く、司会者の馬鹿みたいにカン高い笑い声。真っ白くて日当たりが良いこの部屋に、乾き、響いていた。 「ねぇ…あなた…」 突然、話し掛けてきた女の子。相変わらずテレビを見つめたままだった。 「…あなた、何回目?」 『…何回目って、どういう意味だ?』 「ここに…7階に来たの」 『悪い、質問の意味がわからない』 「そう…初めてなんだね」 何を言ってるのか理解できない俺に、彼女は勝手に納得したようだった。 「じゃあ、他に誰も居ないし…わたしの役目だから…」 『役目?』 「そういうルールなの…」 頷きながら、初めてここ(7階)に来た人には、誰かが教えてあげるルールなんだと付け足した。いまいち何のことか分からない俺。そんな俺を、無視するかのように、彼女はゆっくりと話し始めた。 「それじゃあ、よく聞いてね…」 ………… ぽつりぽつりと語る彼女の言葉。それは、ここに来るまでに聞いた、医者の先生の弁とは少し違っていた。あの事務的な医者の話では、ここは医療の進歩を待つ場所であると言った。心を癒す場所でもあると言った。恐らく、一般的にはそれで正しいのだろう。
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