プロローグ

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でも、彼女の言によるとそれは建前だそうだ。 この7階ってのは、病院内にあって、唯一治療をする場所じやあないらしい。 只、命が尽きるのを待つ場所。 そう彼女は言った。 俺もそう思えた。同じ認識だと思った。 「わたし、2回目だから……」 『2回目ってなにが?』 「…ここに来るの」 そして、彼女は教えてくれた。この7階って場所は、最初の入院でそのまま死ぬまで居ることは、まず無いらしい。治ることは有りえなくても、体調がましになると1度は家に帰してくれる。でも、悪くなると、またここへ帰ってくる。 …その繰り返しで、いつか死ぬ。尽きる場所が、家か7階かの違いだけで、確実にどちらかで死ぬ。避けた奴はいないそうだ。 そういう意味での、彼女はここに来たのは2回目という意味だった。 「じゃあ、1度しか言わないから…」 「ここからは、よく聞いて」 乾いた画面を見つめたまま、言葉を続ける彼女。 その内容は、消灯時間が何時かって、普通の入院患者が交す内容ではなかった。全部違ったことを教えてくれた。
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