プロローグ

3/17
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
2004年 初夏   流れる汗。運転免許試験場に設置された大きな電光掲示板。一斉に点灯をはじめたライト。俺にも他の皆と同じように、自分のナンバーを目で追う。 237、237… チカチカと約8割りほどのライトが点灯する中、無事に自分の受験番号が光った事を確認した。 ちょうど昼過ぎの為か、よく空いていた車内。 そんなガラ空きの車内を、俺は試験場からの帰路についていた。 左手には貰ったばかりの交通教本、胸ポケットには真新しい免許証。 これで俺も、普免許持ちか… 別に、車に乗りたかった訳じゃない。他に何かの目的があった訳でもない。 只、まわりの連中も教習所に通っていたし、車の免許くらい取っておけと言われただけだった。 その夜。 親に免許が取れたことを報告すると、『そうか』と、短く返された。試しに、車を貸してくれと言ってみたら、同じように短く、ダメだ。とだけ返された。 別に車に乗りたかった訳じゃないけど、その返答はあまりに予想通りだった。そんな親だった。 翌日。寝覚めから胸が苦しかったので病院へと向かった。 普段から俺は、病気なんてもんに縁がなかった。だから、受付の待ち時間は、ひどく退屈に感じた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!