プロローグ

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2004年 冬 冬の日。 街頭からクリスマスツリーが姿を消す頃、年末ということもあってか、自宅に帰してくれた。 あくまでも一時的なものらしい。それでも少しは嬉しかった。 みぞれ混じりの雨の中、久しぶりに帰ってきた俺の家。何故か、家族が全員揃っていた。   普段からそれほど話すことも無かった親なのに、どこかギクシャクとしながらも、笑顔で迎えてくれた。いつも口喧嘩ばかりしていた妹が、俺の好きなクリームシチューとエビフライを作って待っていた。 こたつに並んで座った。みかんもむいてくれた。やけに優しかった。それが印象的だった。 この時点で…俺は少しだけ察した。ポケットに入れたままになった、例の真新しい免許証。この免許証は、その価値を生かす事無く終わるのかも知れないと思った。 ギクシャクとした不自然な笑顔に迎えられて… 冷静に、暖味に、ひたすら薄っぺらく、他人事のように俺はそう思った。
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