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あれから会話が続かない。頭は何針か縫ってどうにか傷は塞がりつつあるけど、やっぱりまだ痛い。というか、頭につけているネットが食い込んで痛い。
光はまだいる。一時間は経ったはずなのに、じっとしている。外はもう真っ暗だ。時計の短い針は六と七の中間を指している。もう十月も終わる。これからはもっと早く暗くなるだろう。
「ちゃき?」
そうなことをしみじみ思っていると、突然光が口を割った。
「なに?」
「大事なこと、言わないといけない」
「大事なこと?」
光を見る。肘を膝に立て、頬杖をついていた。顔はどうも、いい表情とは言えない。
「そう。ちゃきは、柳井が好きだろ?」
「え、なにいきなり!?」
「そんなに焦るな。そうだろ?」
「う…うん」
「困ったなあ」
「は?」
困った?何がだろう。は?と言ったまんま、口が塞がらなくなった。
「言っていいか分からんけど…」
困ったって何がだろう。麻紀絵ちゃん(言ってみたかった)を悲しませることか。
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