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心の中に一つの予感。もしや…
「光、まき…柳井さんが好きなのか」
すると突然光が顔を上げ、焦ったふうに横に振った。
「それはない。ない。オレが言いたいのはそういうのじゃなくて…」
手までブンブン振っている。不正解のようだ。
なんなんだよもう。
「麻紀絵な、言ってたんだよ…」
光は緊張すると、一言一言の間が長い。その間を待つのが億劫で、腹が立つ。
「早く言え。早く」
「分かってるって。ちゃきは、でも一つ言わせて。どんなことを言われても、ショックは受けないでな。頼む」
「大丈夫だって。ほら言って」
もしかしたら、聞かなかったほうがよかったのかもしれない。
「麻紀絵な、オレが好きなんだ」
頭が真っ白になった。やっぱり、柳井さんの幼馴染にはかなわない。今日知り合ったばかりなのに、好かれたいと思った自分が、あまりにも惨めで、苦笑が浮かんだ。
「やっぱ、ダメだったよな…」
あまりのショックに、あははとしか発音できない。我ながら情けないものだ。
「悪い、この後母やんに頼まれごとがあるから…今日はバイバイだ。また明日くるからな」
もう、こないで。一人にして。号泣したいくらい悲しくなり、大笑いしたいくらい馬鹿馬鹿しかった。
暗い夜を照らす月や星が、今は呆れ顔をしているように輝きを潜めつつあった。
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