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「頭、痛くない?歩けなかったら、わたしがおんぶするからね」
「だ、大丈夫だよ。それより、授業始まってるよ。大丈夫なの?」
「千秋くんを怪我させたの、わたしだから。責任とらないと」
柳井さんは僕に寄り添って、何回も声をかけながら保健室までついてきてくれた。
「よかったね、大したことなくて」
「うん。あ、ありがとう。わざわざ」
「いいの。わたしのせいで、こんな怪我させちゃったし…本当に、ごめんね」
声は小さくなり、少しうつむいている。柳井さんを落ち込ませてしまったのだろうか。
上目遣いの柳井さん。なんだろう、また胸が苦しくなって、息もつまる。
ドキドキする。柳井さんと二人きりになった時から、ずっとだ。
「じゃあ、行こう」
腕を引っ張られた瞬間、体に電撃が走った。その電流は心臓部に流れ込む。ジリジリと焼けていく。
「待って」
柳井さんを引っ張る。ここで気付いた。柳井さんは、僕よりずっと大きい。故に力がある。
そして、すごい笑顔が愛らしい。こんな笑顔を見たのは、幼稚園の年長で知り合い好きになった、幼馴染の女の子以来だ。
僕は、恋をしていたのか。
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