2123人が本棚に入れています
本棚に追加
―――――
――――
「はぃ!!カット!!
……ん~…悪くはないんだけどね……なんだか少し遥也君っぽくないなぁ」
「…………」
遥也は監督にそういわれ、やっぱり…と小さく零した。
だって自覚していたから。
…今撮影しているのは学園ものの恋愛ドラマだ。
相手の女の子は中原 美帆名(なかはら みほな)。
今ブレイク中の女優で、相手役としては申し分ない子だ。
…しかし今の遥也には駄目だった。
美帆名にむかってどんなセリフをいっていても、頭の中であの子…すなわち木葉の顔がチラつき、集中できない。
「………。
仕方ないね。今日はこれでおしまい!!明日またやろう!!」
監督は遥也の調子が戻らないのを見兼ねてそう提案した。
「すみません……」
そう言われて情けなくもあったが、今の遥也には有り難かった。
今は普通に演技できる自信がない……。
「………探すか」
遥也は自分にしか聞こえないようにボソッと呟き、そのまま帰る仕度をした。
最初のコメントを投稿しよう!