訓練

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幸い、トラウマを引きずり出すような夢を見ずに済んだ。 体を起こす前に時計を見ると、ちょうど時計が正午を指したときだった。 …訓練っていつからなんだ? 40分をまわったとき、部屋のベルが鳴り、あの女性の声が聞こえた。 「食事です」 ドアを開け、迎え入れる。 不安になってきたので思い切って聞いてみた。 「あの…訓練っていつから…?」 「訓練?ああ、それでしたら夜からです。『ここでの仕事は大抵夜から』始まりますからね」 …夜、今から寝た方がいいかな…。 夜の8時になったときだった。 寝ることも出来ず、ソファに座り込んでいたとき、近くにあった電話が鳴り響いた。 受話器を取ると、ジェイドの声が聞こえた。 「始めるぞ。まずは下のシュミレーション室まで来い。ドアを開ければ執事が案内してくれる」 すぐに切れた。 執事に案内され、シュミレーション室に入る。 前に来たときとは違い、変な機械はなく、部屋の雰囲気も全く違っていた。 ホログラムだろうか。 部屋の中央にはジェイドが立っていた。 「あの部屋は気に入ったか?それに執事もなかなかのものだろう」 「てっきりーー」 「てっきり年寄りの男かと思ったか?」 またお見通しらしい。ここで思い出した。 「そうだ、目がオッドアイになってるんだけど……」 「……。 恐らく『禁呪』の影響だろう」 「禁呪?」 「君にしたのは施術だけではない。詳しい話しはまだ後だ」 いつも後回しにされるな……。 「それともう一つ聞きたい」 ジェイドが片眉をつり上げる。 「何で…記憶を消さないの?」 「消す必要がないからだ。それにいくら我々でも確実に過去の記憶を消すことは出来ない。4年前に起きた事件は君も知ってるだろう」 ……4年前、2016年、ロシアで人間の一部のみの記憶を消去するという実験を、数十人の被験者と機械を用いて実践したのだ。 結果、成功はしたが政府が望んでいたものではなかった。
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