引き金

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次第に意識がはっきりとしてくる。 最初に浮かんできたのは『あれ』は夢だ。そういう考えだった。 幸せが粉々に壊された。 そんなの有り得ない。 「目が覚めたか」 スピーカーのようなものから聞き覚えのある声が響く。 慌てて体を起こすと軽いめまいを覚えたが、周りの状況が知りたかった。 白い壁に白い天井、ベッドから身を乗り出す。 そして白い床。 天井には穴のようなものがある。 スピーカーだろう。 向かいの壁に鏡が掛けられていた。 マジックミラーなのは明らかだった。 「起きてすぐ周囲の状況調査。 いい判断だ。 それとも怯えているだけか?」 怒りと不安に身を任せ、マジックミラーに向かって殴りかかろうとした。 ふざけやがって…! 「先に言っておく。 君の家族が皆、殺されたのは事実だ。 しかし殺したのは我々ではない」 すぐに足が止まった。 何なんだコイツら…。 「君はここがどこか分からないだろうが、少なくとも日本でないのは教えてやろう。 もちろん我々も政府や公的機関の者ではない」 ……『我々』って誰なんだ? 「落ち着いたか?」 思い通りにされたのか…。 「では、そちらに行くとしよう」 壁の一部がせり上がり、奥からあの黒人が出てきた。 「気分はどうだ?」
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