引き金

3/7
前へ
/726ページ
次へ
「………」 「簡単に説明しよう。君と血の繋がっている者は恐らく全て殺された」 その事実にはもう、感覚が麻痺して何も感じなかった。 続けて彼は喋る。 「結果として、君は身寄りもなく、独りだ。 そこで、我々が君に『安全』と『保護』を差し出そう」 ここは警察機構なのだろうか? 「その代わり、君は我々の組織の一員となってもらう。 仕事の内容は様々だが、君に充実をもたらしてくれるはずだ。 『外の世界』で胸を張れるようなものではないがな」 もっと詳しいことが知りたかった。 自分には他に選択肢はないし、選択権すらない。 だからせめて、抽象的な言葉だけでなく、納得するような説明が聞きたかった。 「詳しいことは後だ。 まずは施術からだ」 さっきからこちらの考えが見透かされているようだ。 その黒人がマジックミラーに向かって、誘うように指を曲げると、白衣に身を包んだ男が何人も来た。 手足を持たれ、抵抗する間もなく、薬を打たれた。 またかよ……。 遠のく意識の中、耳元で声が囁く。 「君は生まれ変わるのだ」
/726ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41546人が本棚に入れています
本棚に追加