引き金

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途中途中で意識が何度か戻るが、自分が何をされているのか分からなかった。 …解剖? ぼやけた視界の中、視線のみで下を見ると、体のあちこちが切り開かれている。そして大量の点滴…。 見たことのない器具や機械もあった。 激しい痛みが全身を駆け巡る。 その痛みに呻くと、血まみれの白衣を着た男に注射を打たれ、眠らされた。 「あの施術から数週間は経った。 施術は成功した」 ほぼ全身に巻かれた包帯や刺さっている点滴を抜かれながら、例の黒人の言葉に耳を傾ける。 「私はジェイド。 そう呼んでくれ。 ここは我々の組織の基地となる場所だ。 地上から見ればビルだが、今我々がいるのは地下6階だ」 「どこの?」 「アメリカ、ニューヨーク郊外だ」 まだ聞きたいことがあったがジェイドが先に口を開いた。 「これに着替えろ。まずは施術の成果を見せてもらう」 ジェイドから黒いタイトな服を渡される。 「着替えたら私と一緒に下に行くぞ」 ぎこちなく着替えるとジェイドが壁に触れる。 すると、壁の一部が音もなくせり上がった。 角を曲がるとエレベーターのようなものに乗り込む。 「どこに?」 「地下8階、シュミレーション室だ」 エレベーターから降り、明るい廊下を歩くとジェイドが止まった。 指紋認証の機械に触れると、英語で何かが書かれた扉が一瞬でせり上がる。 中に入るとただっ広い空間がそこにあった。 照明が一瞬消え、また点くと、次の瞬間に床から光沢を放つ機械のようなものが飛び出す。 「何をすれば……」 振り返っても、さっきまでいたはずのジェイドはそこにいなかった。 「そのマシンから射出されるクレーを全て避けろ」 いつの間にか別室に移動したジェイドが、スピーカー越しに言った。 「避けろってどうやーー」 言葉を遮って機械から赤い円盤状の物体が発射された。 反射で跳躍し、避けようとする。 すると軽く飛んだつもりが、3~4メートルほど上にいた。 「……ッ!!」 一瞬、パニックに陥りかけるが、それに関係なく機械の砲身がこちらに狙いを定め、次弾を放とうとする。 「次は破壊だ。その機械を壊せ」 「壊せったって、無理だよ……」 機械は頑丈そうな鉄で固められている。 「サンドバッグか何かだと思って力を込めて攻撃してみろ」 機械の元に着地するとすぐに、回し蹴りを放った。 鉄で出来た機械がまるでタンポポの茎のように折る。 「まずまずだな」
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