─ 雪の結晶 ─

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真冬の寒空の下。 何も持たず 行く当てなどもなく ただ..ただ.. 街灯が綺麗な街を 独りで歩いた。 あの頃のように 君に会える気がした。 忘れている。 そう思っていた道を 身体が覚えていた。 初めてあの道を 独りで歩いたよ。 あんなに 淋しい道だった..? あんなに 悲しい街だった..? 君が居ないだけで 私が見る景色は こんなにも違って 見えるんだね。 あの頃の景色を 思い出したくて 日にちが変わっても 独りで歩き続けたよ。 何度通っても 君が居た時の景色は 思い出せなかった。 ずっと..ずっと.. 淋しい道だった。 ずっと..ずっと.. 悲しい街だった。 真冬の寒空の下。 舞い散る雪の結晶が 私の目尻に落ちて 溶けて逝く..。 それはまるで 涙が流れるように 溶け落ちて逝く..。 私には雪が慰めて くれているような 気がして.. 溶けた雪の結晶が 流れ落ちないように ただ..ただ.. 上を向いて歩いた。 君を忘れる為に この道を..。 君を忘れる為に この街を..。 君を忘れる為に 私はいつまでも 独りで歩き続けた..。
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