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絶望の中にいた。
全てを失った。
尊敬していた人達も。
帰るべき場所も。
最愛の人でさえも。
しかし、彼にもたった一つだけ失わなかったモノがある。
それは血塗られた歴史の中にあったモノ。
それはある時は『最強』と謳われ、ある時は『神』と謳われた。
そう、彼らは『神』だった。
彼らは『守護』の『神』。
彼らが前に立ち塞がる時には周囲に一陣の風が吹き、全てを薙ぎ払う。
彼らの前では誰にも、なにもできなかった。
気付いた時には全てが終わり、なにも残らないのだから。
故に彼らは神なのだ。
人でありながら、神にもっとも近い人間。
それが彼ら『護神』。
そして、彼らが扱う流派の名を『護神流』
(………まただ。また夢を見る。)
(俺が幸せで、皆がいる。この幸せの時代に。)
(やめろ。これ以上見せるな。やめろぉぉぉ。)
俺は跳ね起きた。
「うわぁぁぁ。はぁはぁ………夢か。またあの夢か。………くそっ。」
嫌な汗が全身から吹き出している。
とりあえず洗面所で顔を洗うことにしようと思い、洗面所に向かう。
最近になって忌まわしいあの事件が夢になって出てくる。
時は十年を遡る。
俺がまだ十五になったばかりの時に、一族の当主である父から最初の任務を言い渡された。
最初の任務なのだが、先方の依頼から一人ということと一族の集会の時期に重なったことから齢十五の俺に任務を言い渡された。
内容は簡単なもので、某グループの娘をパーティー会場での護衛。歳が近いことでの理由もあったのだろう。ただ話し相手になってくれという依頼だった。
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