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私は不安になってもう一度母を呼んだ。
だけどもう母に私の声は届かない…。
「『私を殺して…?』
そう言った母が私は忘れられない…」
花音はうつ向いて瞳を閉じた。
「私は母に銃を持たされた」
そして今にも消えてしまいそうな声で呟いた…。
「私は引金を引いたわ…」
そっと目を開けて青空を仰ぐ。
「それから私は必要以上に他人と関わらなくなった…」
「何故、銃を…?」
私は笑った。
明るく…。
「あれ?私、陸に言ってなかったっけ?
私の祖父、鳳(オオトリ)組の組長なの」
私の笑顔を見破った人間はいない。
私は何度も何度も「殺して」と叫ぶ声に怯えて引金を引いてしまった…。
誰も私を責めなかった…。
私は今もこうして生きている。
「周りに言いたいなら言い振らすなり好きにすれば良いわ」
私は閉めた屋上の鍵を開けた。
「…どんな…、『どんな過去があったとしても、その人間は今、自分の目の前にいる。
好きか嫌いか、それを判断するのは今のその人間を見る。
その人間が好きならどんな過去があっても人間は好きなままなものよ。
過去は過去。
今は過去じゃない』…」
それは前に私が陸を慰める時に言った言葉だ。
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