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龍也は顔が良いからモテる。
一週間に最低一回は告白されてて、こんな呼び出しもしょっちゅうだった。
だから、今更、なんだ。
なのに、ほら、また。
ズキン
心が、痛む。
龍也はまさに『来る者拒まず、去る者追わず』だった。
それがいつ始まったのかよくわからないけど、彼はいつの間にか彼女を作って、綾が悲しむ暇もないくらい早く別れていた。
そして綾がホッとしたのも束の間、その少し後にまた新しい彼女を作って。
全部相手から告白して、相手から別れを切り出していると聞いた。
龍也はそのことについてあまり話さないから、噂でしか知らないけれど。
(じゃあ、あたしが告白したら、付き合ってくれるんだろうか)
綾の頭にそんな考えが何回か浮かんだが、彼女はそれを実行することが出来なかった。
『綾』
そう呼んでもらえなくなることが、何よりも怖かった。
今の関係を壊すことなんて出来ない。それが綾が出した結論だった。
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴ると同時に、龍也が教室のドアを開けた。
「お、おかえりー」
「どうせまた告白だったんだろー? 羨ましいぜチクショー!!」
「るせぇよ、関係ないだろ?!」
騒ぐ龍也たちの話を聞かないように、綾は机に突っ伏した。
隣で瞳が心配そうな顔してたような気がするが、今の綾は龍也の話を聞かないようにするだけで精一杯だった。
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