03.来る者拒まず、去る者追わず

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  「んじゃ、また明日」 「うん」 家の前で龍也 と別れて、自分も家に入る。 綾は制服のまま、ベッドに倒れこんだ。スプリングの入ったベッドは、ボスン、と軽い音を立てる。 (きっとあたし、最低な女だ) 龍也が他の女と付き合っているのを知りながら、自分の欲望を優先させている。 まだ、龍也の隣は自分の居場所だと主張したがっている。 本当なら「あたしと帰ってないで彼女と帰れ!」って怒鳴ってやるべきなのだろうが、自分の居場所を、龍也を取られたくなくて。 (最低だ、あたし――……) なんて自分勝手な女なんだろうか。 「今日は、どの教科も宿題でなかったなー……」 気を紛らわすように、天井に向かってポツリと呟く。 龍也は宿題のない日は部屋に入ってこない。恐らく自分の部屋でゲームでもしてるんだろう。 普通なら、宿題がないのは嬉しいはずなのに。 龍也が来ない。それだけで寂しくなる自分は異常なんだろうか。 龍也が来ないのに開けてあるベランダのカーテンを見て一気に泣きたくなって、勢いよくカーテンを閉めた。 それからまたベッドに突っ伏して、枕に顔を押し付けて少し泣いた。 泣いても罪悪感や胸に残るモヤモヤは消えなかったが、ちょっとスッキリした気がした。 どうか、どうかもう少し、このままで――……。  
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