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「んじゃ、また明日」
「うん」
家の前で龍也 と別れて、自分も家に入る。
綾は制服のまま、ベッドに倒れこんだ。スプリングの入ったベッドは、ボスン、と軽い音を立てる。
(きっとあたし、最低な女だ)
龍也が他の女と付き合っているのを知りながら、自分の欲望を優先させている。
まだ、龍也の隣は自分の居場所だと主張したがっている。
本当なら「あたしと帰ってないで彼女と帰れ!」って怒鳴ってやるべきなのだろうが、自分の居場所を、龍也を取られたくなくて。
(最低だ、あたし――……)
なんて自分勝手な女なんだろうか。
「今日は、どの教科も宿題でなかったなー……」
気を紛らわすように、天井に向かってポツリと呟く。
龍也は宿題のない日は部屋に入ってこない。恐らく自分の部屋でゲームでもしてるんだろう。
普通なら、宿題がないのは嬉しいはずなのに。
龍也が来ない。それだけで寂しくなる自分は異常なんだろうか。
龍也が来ないのに開けてあるベランダのカーテンを見て一気に泣きたくなって、勢いよくカーテンを閉めた。
それからまたベッドに突っ伏して、枕に顔を押し付けて少し泣いた。
泣いても罪悪感や胸に残るモヤモヤは消えなかったが、ちょっとスッキリした気がした。
どうか、どうかもう少し、このままで――……。
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