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夜、自室で勉強しているとベランダの窓を叩く音が聞こえた。
綾はあからさまにため息を吐くと、窓の鍵を開ける。
ベランダには、幼馴染の龍也が立っていた。
「いやいや、すみませんねぇ」
「そう思うんなら毎回毎回ベランダから侵入してこないでくれる?」
ひらりと自分の部屋のように入ってきた龍也に、わざと嫌そうな顔をする綾。
今やこれはほぼ毎日のことで、これがないと寂しいと感じるなど自分は相当重症だと、苦笑する。
「……で、今日は何?」
窓を閉めながら言うと、満面の笑顔で両手を差し出してくる龍也。
その手の意味がわからなくて首を傾げていると、彼はさらに笑みを深くする。
「宿題見せて」
それはもうニッコリと、語尾にハートマークでもつくんじゃないかというくらい笑顔で。
「……またですか……」
そう言いながらも差し出された両手に宿題のノートを乗せている自分は、やっぱり重症じゃないかと思う。
「サンキュー! さすが綾!!」
そう言ってご機嫌で綾の机に向かう龍也。
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