01.突き放してください

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  「あ、そうだ。明日家の前で待ってて」 ノートを写す手を止めて、振り返って言う龍也。 「…………は? 何で?」 意味がわからなくて、間抜けな返答をする綾。 「や、たまにはいいかなーって思って。最近帰りは一緒だけど、行きは別々だっただろ?」 確かに、ここ数年一緒に登校した記憶がない。 (でもそれって全部……) 「あたしはいいけど……龍也、起きれるの?」 そう、毎朝龍也が寝坊するからであって、それ以外の理由はない。 学校に余裕を持って行きたい綾とは、必然的に別になるのだ。 事実、龍也はほぼ毎朝遅刻ギリギリで教室に入ってくる。それでも遅刻しないのは彼の謎である。 「明日は頑張るって! それにさ、」 龍也は慌てて言った後、少し真剣な顔で続けた。 「前に綾、朝に一人で電車乗るの嫌だって言ってただろ? オッサン達の目が怖いって。だから俺がいたら、もうちょっとマシになるんじゃないかなって思ってさ」 (あぁ、もう) 「……覚えてたの?」 「当然」 (何でそういうこと、言っちゃうかな) どうせ好きじゃないくせに、思わせぶりなことをしないでほしい。 「じゃあ……おねがいします」 「おう、お願いされました!」 好きじゃないなら、いっそのこと、     突き放して下さい。  
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