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「あ、そうだ。明日家の前で待ってて」
ノートを写す手を止めて、振り返って言う龍也。
「…………は? 何で?」
意味がわからなくて、間抜けな返答をする綾。
「や、たまにはいいかなーって思って。最近帰りは一緒だけど、行きは別々だっただろ?」
確かに、ここ数年一緒に登校した記憶がない。
(でもそれって全部……)
「あたしはいいけど……龍也、起きれるの?」
そう、毎朝龍也が寝坊するからであって、それ以外の理由はない。
学校に余裕を持って行きたい綾とは、必然的に別になるのだ。
事実、龍也はほぼ毎朝遅刻ギリギリで教室に入ってくる。それでも遅刻しないのは彼の謎である。
「明日は頑張るって! それにさ、」
龍也は慌てて言った後、少し真剣な顔で続けた。
「前に綾、朝に一人で電車乗るの嫌だって言ってただろ? オッサン達の目が怖いって。だから俺がいたら、もうちょっとマシになるんじゃないかなって思ってさ」
(あぁ、もう)
「……覚えてたの?」
「当然」
(何でそういうこと、言っちゃうかな)
どうせ好きじゃないくせに、思わせぶりなことをしないでほしい。
「じゃあ……おねがいします」
「おう、お願いされました!」
好きじゃないなら、いっそのこと、
突き放して下さい。
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