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「だよねぇ……でもあいつの中であたしはただの幼馴染みなんだよ、きっと。だから今日のことだって多分、深い意味はないと思うし」
「……」
(そう。あいつは単純バカだから、ただ単に困ってるあたしを助けたかったんだ)
――それだけ、なんだ……。
「……ねぇ、綾……」
「ん?」
箸を置いて、真っ直ぐに綾を見る瞳。
「しないの? 告白」
なんとなく予想は出来ていたから、綾もあまり驚きはしない。彼女たちはもう何度も、こんなやり取りを続けてきたのだ。
「何回も言ってるでしょ、そんな気はないって。あたしは今のままがいいの」
(嘘ばっかり。本当は今の関係を壊すのが怖いだけのクセに)
綾は弁当を片付けながら、苦笑する。
瞳がまだ真剣な顔しているから、もしかしたらちゃんと笑えてなかったのかもしれない。
「……わかったわよ、まったく。いつまでたっても不器用ね、アンタ」
瞳の呆れたような声にまた苦笑する。
(ホント、不器用だね、あたしは)
多くは望まなかった。ただ、傍にいられるだけでいいと。
だけど、いつからかな。
あたしは、それ以上を望んでしまった。
臆病なあたしは、『不器用なせいで』を言い訳にして、この気持ちに蓋をしたかったのかもしれない。
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