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設楽。
そう名乗った剣は、それきり口を噤んだ。
颯太はそのまましばらく待ったが、話が進む様子もない。
思わず首を傾げた所で、
「すまない。君の名前を教えてはもらえんか?」
と尋ねられた。
設楽は、自身の名乗りの後、颯太の名乗りを待っていたのだ。
颯太はハッとして、慌てて簡単な自己紹介をした。
「ふ、む…?アオヤマソ…ウタ?」
「あー…切るとこが違う。青山、颯太だ。颯太が名前」
「ソウタ…ソ・ウ・タ…颯太、どうだ?」
「お、バッチリだ」
颯太はグッと親指を立て、笑ってみせる。
「ふむ。颯太か…聞き慣れない響きだが、心地よいものだ。して、颯太はここで何をしていたんだ?」
設楽の問いに、颯太は一度周りの森を見回してから俯いた。
「それが、わからないんだ」
「む…どういう意味だ?」
「そのままさ。わからない。どこから来たのか、どこに行くのか、何をするべきなのか…自分の名前さえ、これを見るまで思い出せなかったから」
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