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「どうして、こんなところに・・・?」
少年には、自分が何故こんな場所にいるのかがわからなかった。
いや、それどころか彼は―――
「俺・・・なんて、名前だっけ・・・?」
言葉にしてしまってから、全身に嫌な汗が吹き出した。
いくら記憶を探っても、自分の名前も、親の顔も、友人の有無も、自分に関する思い出の重要な部分が思い出せない。
「は・・ぁ・・う、ぇ・・」
恐怖と不安に吐き気が込み上げる。
やけに大きく、自らの鼓動が耳の奥で響いた。
「う・・・うぇ・・・」
吐き気がまた新たな吐き気を呼ぶが、空っぽの胃から送られてくるのは胃液ばかりだ。
少年は目に涙をためて、落ち着くまでの間、堪えていた。
「ふ・・ぅ・・・そ、そうだ・・・」
少年は、まだ荒い息を整えながら、おもむろに制服のポケットを探った。
何か、自身の証になるものでもないかと思ったのだ。
でてきたのは、ライター、ハンカチ、それから、
「これは!?」
少年は一枚のカードを覗き込んだ。
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