13人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
ガツッ!
「あっ!・・とと・・」
颯太は、地面から覗く太い木の根に足をとられて躓いた。
これで歩き出してから三回目となる。
別に颯太の歩き方が悪いとか、足に怪我を負ったというわけではない。
「はぁ、はぁ・・・ふぅー・・・」
颯太は足を止め、額に張り付く前髪をかきあげ、シャツの胸元をパタパタと上下させた。
暑いのだ。それも尋常ではなく蒸し暑い。
湿気を含んだシャツや制服は重量を増し、張り付いたそれが手足を引っ張る。
必要以上に体力が削られ、熱に浮かされた頭はクラクラと揺れた。
「はぁ・・・はぁ・・・」
僅かな休憩を挟みつつ、ひたすらに歩く。真っ直ぐに歩いているつもりだが、定かではない。なにしろ、幾ら歩いても景色に変化が見られないからだ。
森の出口に向かっている様子もない。もしかすると、深奥へて踏み込んでいるのかもしれない。
流石に疲労もピークに達しようとした時、
「・・・あ・・・?」
チカリ、と視界の隅に光るものを見た。
明かり?人がいるのかもしれない!
そう思うと、弾けるように体が動いた。
木々の枝を避け、根を飛び越えて、光の見える方向へ走る。
そこには--。
最初のコメントを投稿しよう!