2886人が本棚に入れています
本棚に追加
恐る恐る顔を上げてみると、至近距離に顔。痛みで歪んではいるが、かなり整った顔立ちをしている。
男?女?
性別がよくわからないけど…とにかく、ぴったりな形容は"美しい"といった感じ。
状況も忘れぼけーっとその顔を眺めていると、その人は少し不機嫌そうに口を開いた。
「…重い。」
低い声。男の人なのか。
一瞬納得して、ふと我に返ればあたしは男の真上に乗っかっていた。
「ぎゃ!ごごごめんなさい!!」
品などかけらもない悲鳴を上げつつ慌てて退くと、男はやれやれと言うようにため息をついて立ち上がる。
改めて見たけど…本当に上から下まで真っ黒な人だ。
漆黒の髪に上下黒の服装、真っ黒な靴。葬式帰りかと思ったけど、喪服とは雰囲気が違う。
そのかわりに肌が雪のように白く、背が高く全体的に線が細い。かといって弱々しいわけでもなく、むしろ逞しい印象だ。
観察を終えてふと見ると、彼は自分の服の一点を見つめてブルブルと震えていた。
彼のその視線を辿ってみるとそこには
「あっ…!」
真っ黒な服に映える真っ白なグチャグチャの
ご飯粒たち…
あたしの朝ご飯の無惨な姿が、そこにあった。
最初のコメントを投稿しよう!