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ユラリとこちらを冷たく見据える男。
その様子から、激怒している事が容易に判断できる。だって青筋立ててこめかみをぴくぴくさせているんですもの…
「服が…」
「ぅギャーごめんなさい!!」
般若降臨かとも思うほど彼の端正な顔は歪んでいた。と言うより、変形していると言った方が当てはまるかも。
地を這うような低い声で、責めるように彼は続ける。
「新しいし高かったのに…」
「すいませんごめんなさいあたしが悪うございました!!弁償でも何でもしますからっ…どうか命だけはあぁぁ!!」
土下座しながら謝ると、男はふっと般若の顔をやめて、ニヤリと妖しく微笑んだ。その美しすぎる微笑に、嫌な予感が瞬時に背筋を駆け抜ける。
「今…何でもするっつった?」
「はっ、へ?あ、はい…」
…ん、ちょっと待てよ?
肯定してしまってから気づいたが、今の言葉はかなり危険なのではなかろうか?
そう考えるも、言ってしまったことはもうどうにもならないため、不安ながらも次の言葉を待つ。
「じゃあ、そうだな…俺を楽しませてくれたら許してやる。」
「え…あ、はぁ…あのー具体的には何をすれば?」
楽しませるくらいなら安いもんだと安を取るため笑みを貼り付けて尋ねてみる。がしかし、次の瞬間彼の口から飛び出したとんでもない発言に、あたしの顔からは作った笑顔すら吹っ飛ばされた。
「そうだな…じゃ、体で償ってもらうかな。」
「はぃっ!体で!から…
体…
からだぁ!?いやいやあたしそんなことできませんって!」
「何でもやるっつったのはどこのどいつだ?」
「そ、そういう意味じゃ…」
「自分の発言には責任を持ったほうがいい。」
ニヤニヤと笑いながら、次々に言葉の逃げ道を塞いでいく男。絶体絶命のピンチだが、これでは逃げようもなく、どうすべきかと混乱する頭で考えていると…
なんと敵さんはこちらに歩み寄って来ているではないか!!
ど、どうしよう…
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